偉大なる音楽家ジョン・レノン No.9

  • Aug 06, 2012
  • Pankie Koba

「ア・ハードデイズ・ナイト」の発売後、まもなく7月28日・29日のスウェーデン公演を行い、さらに8月19日~9月20日まで2回目のアメリカ公演を行いました。

その大規模なアメリカ公演を挟んで作ったアルバムが「ビートルズ・フォー・セール」です。1964年8月11日から10月26日にかけてアビイ・ロード・スタジオでレコーディングされました。イギリスでは12月4日にリリースされ9週間トップを飾りました。

収録曲は14曲中、8曲がオリジナルですが、ジョン自身が作った曲は「ノー・リプライ」、「アイム・ア・ルーザー」、「パーティーはそのままに」の3曲だけで、ポールと一緒に作った「ベイビーズ・イン・ブラック」を入れても半分だけでした。

このアルバムのレコーディングをする半年程前、ハンブルク時代に真の友情を育んだアスリット・キルヒヘアは写真家として、映画「ハード・デイズ・ナイト」の撮影旅行に同行し、ビートルマニアの凄まじさを目の当たりにしてジョンの精神的疲労をひどく憂いてました。

A面2曲目の「アイム・ア・ルーザー」はジョンがボブ・ディランに傾倒してた頃に作った曲ですが、彼女はジョンの心の叫び、嘘のない言葉が胸に突き刺さって泣きながら聴いたそうです。

ビートルズのメンバーとは、アルバム発売後のクリスマスショーに招待された時に再会しますが、精も根も尽き果てたジョンの姿に心が引き裂かれ、その後自分からは一切連絡をとることはありませんでした。もはや、住む世界が明らかに変わってしまったと感じたのでしょう。

アルバムジャケット写真はみんな陰鬱な表情ですが、タイトルはクリスマスシーズンということもあり、「ビートルズ売出し中」という皮肉なものになってます。

オリジナル以外の選曲をみても、かなりアメリカ市場を意識してるのがわかります。それと実際にアメリカの土地を踏んだことが大きく影響してるのでしょう。カントリーやロカビリー系の曲調のものが多く、シャッフルビートの曲が目立ちます。「アイム・ア・ルーザー」をはじめ、オリジナル曲にもシャッフルビートを使ってるので、アルバム全体がカントリー調に仕上がってます。また、オリジナル以外の曲も長年のライヴ・レパートリーばかりなので、流石としか言いようのない仕上がりです。

このアルバムで印象的な曲は何と言ってもA面1曲目の「ノー・リプライ」でしょう。いきなり、イントロなしでボーカルから入る新しい試み、ジョンの切ない声、最高です!このA面1曲目と2曲目は、アルバムの中でジョンが表現したいすべてが凝縮されてると言ってもいいでしょう。

このレコーディングの中、8月19日からアメリカ・カナダの大規模公演を行いました。そして、8月29日、コンサートの後、ニューヨークのデルモニコ・ホテルで憧れのボブ・ディランとジョンは会うのです。

それからのジョンのスタイルはまったく変わりました。客観的ではなく主観的に曲を書くようになり、ロックと自分の内面を表現した詞の融合は、次のアルバム「ヘルプ!」で見事に表現されます。

ただ、ジョンの心の葛藤・悩みは極限状態を迎えてました。

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